ブランディングとは何か?
弊社は基本的に祝日も出勤日ですので、昨日は普通にお仕事デーだったのですが、電話が掛かってこない静かな祝日を狙って、不定期に勉強会を行っていたりします。昨日は「ブランディング」をテーマに、Zakiさんのコーディネートで、フリーディスカッションを行いました。
参加者はデザイナー5名+私。例のひとつとして、いくつかのチョコレート商品のブランド戦略をZakiさんが紹介しながら、「ブランドってなに?」「ブランディングってなに?」「ブランディングとマーケティングはどう違うの?」といったお題で、みんなが自由におしゃべりしつつ、最終的に「ナックウェブとしてブランディングをやるの?やらないの?」といったところまで話を広げた感じでした。
意外に思われるのかもしれませんが、私たちはブランディングという言葉が苦手です。というのも、これらはおそらく広告、マーケティング、コンサル業界の言葉で、HTMLはどのように書くべきとか、CSSでこういうプロパティを使うと便利とか、そういう情報が飛び交うガチのWEB制作の現場からすると畑違いの言葉だからです。ブランディングの言葉の意味を深く考えるとわかるのですが、ブランディングが私たちが直接担当しない前工程だからだとも思います。
とはいえ広い括りで言えば、弊社がやっていることは広告業ですし、「ブランディングもお願いします」と言われることも最近特に増えてきましたから、ブランディングなんて知らないと言い捨てることもできません。それに各自が意識せずにブランディングをやっていることも多く、実はその部分がクライアントさんに非常に喜ばれていると聞くと、何となくでやっているブランディングの知識と技術を共有し、各自がブランディングを少し意識するだけでも、クライアントさんに喜ばれるWEBサイト制作がもう少しできるのではないかと思うのです。そういう意味では、私たちとしてブランディングに気づく良いきっかけになりました。
ちなみに「ブランド」「ブランディング」「マーケティング」など、抽象的なキーワードが出てきましたので、現時点での私の考えを説明します。
「ブランド」とは商品でもサービスでも会社でもいいし、それらを集めた集団でもいいし、ぶっちゃけ何でもいいのですが、人々に知らしめるモノやコトの1個の単位や括りのことだと理解しています。例えば1個のお椀を大衆に知らしめたいのなら、その1個のお椀がブランドになるし、同じ技法で作ったお椀をまとめて大衆に知らしめたいのなら、お椀の技法がブランドになるし、そのお椀を作った職人を大衆に知らしめたいのなら、お椀の職人がブランドになるし、お椀を作った会社を大衆に知らしめたいのなら、お椀の会社がブランドになるし、そのお椀を作っている産地を大衆に知らしめたいのなら、お椀の産地がブランドになると思います。
ブランドがなぜ生まれてくるかですが、売り手と買い手の両者にとってメリットがあるからだと思います。売り手が個々の商品の個性を丁寧に説明していけば商品は売れるはずですが、それを丁寧にやろうとすればするほど労力やコストがかかります。それに実際のところは作っている職人が同じだったり、使っている技法や材料が同じだったりして、説明文が共通になることも多いはずです。そうすると、どうしてもそれらをグループで括り、グループを1個の単位にして説明したいという欲求が生まれます。その抽象的な1個の単位がブランドかなと思います。
買い手にとってもメリットはあります。買い手がマーケットにずらりと並ぶ商品個々の個性を理解し、購入判断していくのは非常に骨の折れる作業です。全くこだわりがないのであれば、出会った商品を躊躇なく買っていけば時間は節約できるわけですが、一方で買い手は自分に合う商品が欲しいとも思っています。もし自分にぴったり合う商品群を誰かがあらかじめグループで括っておいてくれれば、買い手は購入判断に要する時間も節約でき、高い満足感も得られるはずです。このように自分にぴったり合う商品群を表す1個の単位として、ブランドは買い手にとっても大きく役立ちます。
先ほどブランドは何でもいいと言いましたが、正確に言えば、なんでもブランドになる資格があるというだけで、実際にブランドになるにはいくつかの条件が必要です。最低限必要なものは名前です。ブランドは1個の単位を示すわけですから、私たちの業界で言うところの、一意でユニークな名称が必要です。これがないと、そもそも記憶の取っ掛かりがないわけですから、ブランドとして機能させるのはさすがに厳しいですね。
さらに説明文は必要です。名前だけでは何の括りかわかりませんからね。長文で説明することも必要ですが、やはり一言で表現できた方がいいと思います。前者はブランドコンセプト、後者はキャッチコピーとして、ブランドというバーチャルな言葉に意味を与えます。
最低限これらがあれば何とかなると思いますが、人の中でも言葉で記憶するのが得意な人と、イメージで記憶するのが得意な人と、大きく2パターンの方が居るようですので、後者のためにブランドの紋章があるといいですね。これらがロゴマークやロゴタイプと呼ばれるもので、全ての人にブランドを俊敏に認知させることを助けます。
ブランドと呼ぶ、抽象的な1個の単位を具象化するためのアイテムはいろいろ考えられますが、ケースバイケースですので、これらをクライアントさんと一緒になって考えていく行為が「ブランディング」ではないかと思います。実際の作業としては、クライアントさんとミーティングを重ねて、ブランドの属性を炙り出し、その中から買い手が喜んでくれそうな属性を抽出し、それらを認知しやすい、かつ好感を持ってもらえそうな名前や文章や画像に変換していく、、、という非常に繊細で、高度なコミュニケーション技術になります。つまりブランディングという行為を経て、人々に知らしめるモノやコトの1個の単位がブランドとして強化されるのだと思います。
次に「マーケティング」ですが、単一の商品やサービスや会社でもいいし、抽象的なブランドという単位でもなんでもいいのですが、それらを買い手に知らしめる行為を指すと思っています。ですので、ブランド・ブランディングとマーケティングは直接関係はない言葉ですが、ブランドとはその本質ゆえにマーケットに放り込まれる運命にあるわけですから、ブランドとマーケティングが同時に語られることが多く、混同されやすいのだろうと思います。
最後に「ナックウェブとしてブランディングをやるの?やらないの?」の問いについては Yes とお答えしたいと思います。はっきり言って、弊社はWEB制作会社ですので、ミクロな視点で言えば、ブランディングは専門外なのですが、実際のところはブランディングに巻き込まれることが実に多いです(笑)
例えば新商品・新サービス・新会社をまずはWEBで広告宣伝したいというケース。こういう案件は実に多いのですが、例えば新商品の名前は決まっているけど、それ以外は何も決まっていなかったりします。サンプル品さえない場合もあります。弊社はこういう案件もかなり経験してきましたので、こういう場合はいきなりWEBサイトを作り始めるのではなく、まずはコンサルティングから始めます。
電話や電子メールや面談で、会話のキャッチボールをしながら、何を大衆に知らしめたいのか?そのモノの属性は何か?その中で大衆に喜んでもらえそうなことは何か?等を聞き出していきます。私に質問されても、「う~ん、何だろう・・・」と答えに詰まる方も実に多いですが、それだとWEBサイトを作っていって、目に見える形になってから、「いや、思っていたのと違う・・・」と言われかねませんので、じっくり考えていただいて、少なくとも名前やコンセプトは決定しておきます。そして、それらを具象化したアイテムとして、キャッチコピー、ロゴマークやロゴタイプ等のBI(ブランド・アイデンティティ Brand Identity)をお作りし、さらにWEBサイトや名刺・パンフレットなどを媒体制作をしていきます。
こんな感じで日常的にやっていますので、ブランディングを専門とする会社のようにはいきませんが、ブランディングには付随的に携わってきました。ですので、ブランディングは専門外と言わず、私たちの知識や技術でブランディングのお役に立てるのであれば、ぜひ積極的に請け入れていきたいと考えています。