社長も会社の一員に過ぎない
先日、若いウェブデザイナーさんと長々とお話しする機会をいただきました。既にフリーランス(個人事業主)として活動している方だったのですが、法人設立にも興味がありそうだったので、ウェブデザイナーを個人事業主としてやるのか、株式会社を設立して社長としてやるのか、その違いは何か?という話になりましたので、それについて書いてみようと思います。
ご存じだと思いますが、株式会社を設立するのは簡単です。昔は有限会社は300万、株式会社は1,000万の資本金を積まないといけませんでしたが、今は株式会社を1円の資本金で設立できます(有限会社は無くなりました)。実際には印紙代として20万円程度掛かりますが、その他の代行手数料を含めても30万くらいで株式会社が設立できたと思います(詳しくは司法書士さんに聞いてください)。ですので、お金を少し積めば、誰でも株式会社の社長には成れます。
個人事業主が株式会社を設立する目的としては、「箔を付けること」が大きいと思いますが、実際のところ株式会社を設立すると、税務申告が複雑になったり、社会保険の加入義務が発生したりして、かなり大変です。日々経験している身としては、安易に株式会社設立は薦められないですね。それではどういうときに株式会社設立がお薦めかと言えば、「いろんな人の力を借りて事業を大きくしたい」場合じゃないでしょうか。
株式会社を設立すると、人を雇用することができます。もちろん個人事業主でも雇用はできるのですが、個人事業主の場合は「親方に付き従う」といった感じになるのに対し、株式会社の場合は「何らかの理念と目的の下で活動する組織に参加する」という感じになり、社員がより積極的、かつ長期的に会社の事業に参加してくれる可能性が高まります。
また、株式会社を設立すると、金融機関からお金を借りやすくなります。もちろん個人事業主でもお金を借りることはできるのですが、家計と事業会計が分かれていないので、事業性を判断してお金を貸しにくいでしょう。その点、株式会社の場合は、社長の家計と会社会計が分離していますので、事業性を見て大きなお金を貸すことができます。
株式会社を設立する際に注意しないといけないのは、「社長は従業員と同じように会社を構成する一員である」と理解することではないでしょうか。もちろん社長は組織の理念と目的を提唱し、それに従って従業員を評価する存在なので、会社の中でも唯一無二の役割を担っていると言えますが、役割という意味では従業員も個々で異なった役割を担っているわけですから、根本的な差異はありません。役割が違うというだけです。これをちゃんと理解しないと、「株式会社の皮を被った個人事業主」のようになってしまいますので、いろんな人の力を借りにくくなり、株式会社のメリットが享受できません。
いろいろ申しましたが、そんなわけで、「いろんな人の力を借りて事業を大きくしたい」と思う方は、ぜひ株式会社設立にチャレンジしてみてください!